後悔しない建築士の転職|一級建築士・二級建築士の転職活動の進め方と注意点を解説
現在、設計事務所や企業で建築士として働いているものの、「年収をもっと上げたい」「労働環境を改善したい」「違う領域の設計にチャレンジしたい」などの理由から転職を考えている方も多いのではないでしょうか? 近年、建築業界では転職市場が活発化していますが、どのように転職活動を進めれば成功するのか、不安を感じることもあるでしょう。
本記事では、 建築士の転職事情や転職活動の進め方、転職の成功・失敗事例 まで詳しく解説します。
1. 建築士の転職理由とよくある悩み
そもそも建築士の人たちは、どのような理由で転職を考え、実現しているのでしょうか?以下によくある転職理由をいくつかピックアップしてみました。
1-1. 年収を上げたい
転職理由の一つに、今よりも年収をアップしたいという方もいるのではないでしょうか。
2019 年の政府統計 によると、 一級建築士(平均年齢 48 歳)の平均月給 は以下のように算出されています。
- 1,000 人以上の会社では、約 50 万円
- 100 〜 999 人の会社では、約 40 万円
- 10〜99 人規模の会社では、約 38 万円
もちろん勤めている企業や事務所の規模、賞与の有無、あるいは資格や経験年数によって年収は大きく変化しますが、参考までに自分の現状と照らし合わせてみても良いかもしれません。
1-2. 労働環境を改善したい
中には、労働環境を変えたいという人もいるでしょう。例えば、
「残業を減らして家族との時間を作りたい」
「子育てがひと段落したのでもっとバリバリ働きたい」
「両親の介護のため、実家の近くで転職したい」
「リモートワークも併用しながら働きたい」
といった希望をあらかじめ持って転職活動を始める人もいます。
1-3. キャリアアップ・キャリアチェンジ
キャリアアップもよくある転職理由の一つです。特に自分の実現したいことや目指す方向性が明確にある場合は、今の企業で働き続けるのではなく、違う環境で自分の強みを活かしステップアップする方が良い場合もあるでしょう。
一方で、これまでの設計分野から違う用途・規模の設計にキャリアチェンジをしたいという話もよく耳にします。例えば、
「これまで住宅設計を中心にやってきたものの、非住宅案件の経験も積みたい」
「大規模プロジェクトにこれまで関わってきたが、もう少し規模の小さいプロジェクトに裁量を持って関わりたい」
「アトリエ事務所で働いていたが、大手企業で働きたい」
などというケースです。場合によっては未経験の状況から新しい領域の設計を始めることになるので、どのような事務所・企業であれば自分の希望が実現しそうかどうか、その場合の条件面はどうなるのか、など様々な側面から検討する必要があります。

1-4. 企業文化や職場環境の不満
職場のカラーや働いている人たちとの相性というのも、働く上では大事な要素の一つです。職場は 1 日の大半を過ごす場所になるので、企業文化や環境によるストレスが大きいのであれば転職を考えてみても良いかもしれません。
1-5. 独立・フリーランスになるためのステップ
建築士のみなさんの中には、将来的に自分の事務所を立ち上げたい・フリーランスとして仕事をしたいという思いを抱いている人も多いことでしょう。 独立する前に身につけたいスキルがあるという方は、独立前に一度転職するのも良いでしょう。
2. 建築士の転職市場と将来性
現在、さまざまな企業や設計事務所で、建築士に対する需要が高まっている傾向があります。建築設計業界では慢性的な人手不足が続いており、経験豊富な建築士の高齢化や引退が問題になっています。特に 構造設計や設備設計 では、その傾向が顕著です。
また近年では、 BIM(Building Information Modeling)や AI の活用が進んでおり、デジタルスキルを持つ建築士の需要が急増しています。
2-1. 建築士の求人数は増えている?
2024 年 12 月の厚生労働省の職業安定業務統計 (出典 )によると、一級建築士・二級建築士を含む「建築・土木・測量技術者」の 有効求人倍率(求職者1人に対する有効求人数)は約 6.24 倍 となっています。2012 年時点のデータでは有効求人倍率は約 2 倍なので、明らかにこの約 10 年間で求人数が増えていることがわかります。
2-2. 転職しやすい年齢層とキャリアパス
人手不足や求人数の増加を考慮すると、年齢に関わらず転職のチャンスは十分にあります。特に、 30代〜40代のシニアアーキテクトやプロジェクトマネージャーの需要 が最も高まっています。30代になると、キャリアや働き方を見直し、他社へ転職したり独立したりする人が増えるため、10年以上の実務経験を持つ人材が不足し、結果として30代〜40代向けの求人が多くなっています。
一方で、未経験の分野にチャレンジしたい場合は、 20代〜30代前半のうちに転職する方が有利 なこともあります。現在、多くの企業が人手不足に直面しており、経験が多少不足していても育成に力を入れるケースが増えています。また、若いうちであれば、新しい環境へ挑戦しやすいというメリットもあります。
最近では定年後の 60 代の建築士を採用する企業も増えています。人手不足の時代で、長年の知見を活かしてプロジェクトを監修したり、若手・中堅の教育を担ったりするシニア建築士のニーズも以前より高まっています。

2-3. 建築士が求められる業界
建築士の主な就職先として、まず挙げられるのが 設計事務所 です。一口に設計事務所といっても、以下のようにさまざまな種類があります。
- ゼネコン設計部
- 組織設計事務所
- アトリエ事務所
- 構造設計事務所
- 設備設計事務所
- ハウスメーカー
それぞれ規模や強みが異なり、業務内容も多岐にわたります。近年では、リフォーム・リノベーション業界や、官公庁・自治体での公共施設の設計・管理業務も注目されています。
また、設計事務所以外にも、建築士の知見や経験が求められる業界があります。例えば、以下のような業界が挙げられます。
- 工務店
- 不動産仲介
- デベロッパー
- 建設コンサルタント
- 建材・設備メーカー
- BIMエンジニア
- 建築DX業界
未経験の業界へ転職するのは勇気がいるかもしれませんが、自身の強みや興味を活かせる新たなキャリアを検討してみるのも良いでしょう。
3. 転職成功のための具体的なステップ
転職を成功させるためには、しっかりとした準備と計画が必要です。ここでは転職を成功に導くための具体的な進め方をご紹介します。
3-1. 転職の目的を明確にする
まず最初に、なぜ転職をしたいのかを明確にしましょう。目的が不明確なまま転職活動を始めると、後で「思っていた職場と違った」と後悔する可能性があります。
転職したい理由が複数ある人も中にはいるかと思いますが、全ての条件を満たせる理想の環境を見つけるのは現実的でない場合もあります。ベストな選択をするためにも、優先順位をしっかりと定めて転職の軸を明確にすることが大事なポイントです。
3-2. 自分のスキル・強み・弱みを把握する
次に、自分のスキルや経験を一通り書き出してみましょう。以下のようなポイントを整理すると、自己PRしやすくなります。
- 専門分野(意匠設計、構造設計、設備設計、インテリアデザインなど)
- 設計経験 / 年数(住宅、商業施設、公共建築など)
- 使用できるソフトウェア(AutoCAD、SketchUp、Revitなど)
- マネジメント経験(プロジェクト管理、チームリーダー経験など)
- 資格(一級建築士、二級建築士、構造設計一級建築士など)
また一方で、自分の弱みも認識し、それを克服するための計画を立てることも大切です。
3-3. 履歴書・ポートフォリオを作成する
建築士の転職において、履歴書や職務経歴書に加え、特に意匠設計の建築士の方はポートフォリオの作成も非常に重要です。特に設計業務に関わる職種では、過去の実績を視覚的に伝えることで、自分のスキルをアピールしやすくなります。
多くの場合、第一段階では履歴書やポートフォリオなどの書類だけで判断されるケースが一般的です。過去のプロジェクトをただ羅列するだけではなく、自分のこだわった点やスキルが相手に伝わるようなものに仕上げましょう。

3-4. 転職活動のスケジュールを立てる
転職活動は計画的に進めることが成功のカギとなります。
情報収集(2 週間〜 1 ヶ月)
企業の求人情報をチェック
転職エージェントに登録応募書類の準備(2 週間〜 1 ヶ月)
履歴書・職務経歴書・ポートフォリオを作成求人応募・面接(1〜3ヶ月)
企業選定と応募
面接準備と実施内定・退職手続き(1〜2ヶ月)
このように、転職先で働き始めたい時期の 3〜6 ヶ月ほど前 から準備を始めるのが一般的です。
専門家に相談 すれば、すぐに採用できる会社を紹介してもらい最短時期で転職したり、逆に数ヶ月〜 1 年以上先の時期の入社でも採用してくれる会社を紹介してもらうことも可能です。
現在の仕事を続けながら転職活動をする場合は特に、スケジュールを明確にし効率的に進めましょう。
3-5. 自分に合った企業を探す
建築士向けの求人は、さまざまな媒体で見つけることができます。よくある方法としては、
- 転職サイトの活用
- 転職エージェントの利用
- 企業HPの求人情報
- 人脈を活用する(知人や同僚の紹介)
が挙げられます。
転職エージェントを活用すると、非公開求人の紹介や転職活動のアドバイスなど様々なサポートを受けられるため、効率的に転職活動を進められます。中でも業界知識の深い、建築業界に特化したエージェント がおすすめです。
3-6. 面接対策
面接では、スキルや経験だけでなく、転職理由やキャリアビジョンについても明確に伝える必要があります。事前にしっかりと企業研究を行い、理解を深めてから面接に臨みましょう。また自分のポートフォリオを活用しながら、具体的な実績やスキルを伝えるのも良いでしょう。
建築士の転職を専門で支援している「設計転職」に、建築士のキャリアに特化した面接対策を支援してもらうことも可能です。
専門家の目から見た履歴書・職務経歴書・ポートフォリオへのフィードバックや、各企業・設計事務所で過去に面接した建築士の方々から得た情報をもとに過去の質問を把握したり模擬面接を行ったりすることもできます。建築士専門の転職コンサルタントに相談してみたい方は無料相談フォーム からご相談ください。
4. 建築士転職の成功・失敗事例
4-1. 実際に転職して年収がアップした事例
新卒から同じ会社に勤めていた 6 年目・30 歳の建築士が、1 回の転職で年収 430 万円 → 650 万円(151%)にアップした事例なども珍しくありません。
同じ会社に勤めていると毎年のベースアップだけでは大幅な給与アップ・待遇改善は期待できないことも多いですが、建築士を採用したい企業が増えている今、正しい企業とポジションを選ぶことによって一度の転職で大きく年収を上げることも可能です。
企業の規模を上げると年収は上がる?
意匠設計→意匠設計でも、設備設計→設備設計でも、待遇の良い会社や自分を求めてくれている会社を見つけることができれば、業務内容を変えずに年収を上げることも可能です。
特に大手の組織設計事務所、ゼネコン、デベロッパー、ベンチャー企業などへの転職で年収アップを狙えることが多いです。
職種を変えると年収が上がる?
また、最近では建築士の経験を活かした PM 職への転職も増えており、年収が上がるケースも多いです。意匠設計を経験してきた建築士はもちろん、構造設計、設備設計、内装設計・インテリアデザインなどの経験分野から PM に転向する建築士も増えています。
まだ広く知られていない PM 職がどのような業務を担当するのか聞いてみたい方は、コンサルタントとの無料相談 で説明を聞いてみたり企業とのカジュアル面談を申し込んでみたりしてみてください。
4-2. ワークライフバランスが改善された事例
ここ数年で働き方改革は多くの企業で普及してきましたが、組織設計、アトリエ、ゼネコン設計部、どの業種でもまだ建築士の残業が多かったり、徹夜で作業をしなければいけなかったりして、転職を検討しているケースも少なくありません。
アトリエからアトリエに転職した建築士でも、残業が少ないホワイトな設計事務所に転職できた事例もあります。組織設計やゼネコンも企業によって働き方の特徴が異なるため、正しい情報収集によってワークライフバランスを改善できている建築士も増えています。
リモートワーク、副業 OK、フルフレックス制度を導入している企業なども増えてきており、ワークライフバランスを重視してホワイトな企業に転職するには企業の働き方についての情報収集が極めて重要になります。

設計事務所同士の業務委託のタッグを支援するプラットフォーム「アーキタッグ」を運営している同じ会社が建築士の転職を支援するサービス「設計転職」では、運営会社が各社の業務の進め方やスタッフの人柄まで深く把握していることが多いため、一般的な公開情報や転職エージェントよりも一歩踏み込んだ情報を教えてもらえることが多いです。
気になる設計事務所があるときや、自分が希望する働き方を実現できる会社を紹介してもらいたいときは、設計転職のコンサルタントとの無料相談 も活用してみてください。
4-3. 未経験業界へチャレンジした建築士の体験談
最近では建築領域でも様々な企業や職種が生まれており、建築やデザインの素養・バックグラウンドがある建築士が求められる新しい業界なども増えてきています。
プロジェクト・マネジメント職(PM):建築におけるプロジェクト・マネジメントとは、顧客側・施主側の立場に立ったコンサルタントとして、建築プロジェクト全体の振興を任され成功に導くことが期待される職業を指すことが多いです。
オフィス移転、自社ビル建設、新築の工場建築など、企業にとっては数年・数十年に一度であったり初めてのイベントであったりするため、誰に何を依頼すればいいのか、適正な工期や予算はどれくらいなのか、全くわからないといったケースも少なくありません。
そこで PM 職が企業のコンサルタントとして雇われ、プロジェクトの企画や要件整理、依頼する設計事務所や施工会社の選定、スケジュール管理や予算管理など、建築の専門家としてプロジェクト全体の円滑な進行と成功を任されるニーズが増えてきています。PM 職には建築や設計を知り尽くす建築士が雇われ、新しい挑戦をするケースが多いです。
ベンチャー企業:最近では建築系のベンチャー企業も増えてきており、技術職としての建築士としてそのまま転職をしたり、IT スタートアップや新興デベロッパーなどで新しい職種に挑戦する建築士も増えてきています。特に、専門職として設計に携わってきた建築士の経験やノウハウが重宝される企業やポジションも増えてきているため、建築士の新しい挑戦や成長を求める環境としてベンチャー企業が選ばれることも多いです。
都市開発・建設コンサル:建築設計の領域から、デベロッパーやゼネコンで都市開発を担当するポジションに転職したり、土木やインフラ開発などを担う建設コンサルのポジションに転職する建築士も増えています。新築の建築設計を中心に手がけていた職種から、地方の都市開発に興味関心が湧いたり、既存建築の改修に力を入れたくなったり、特に 30 代中盤頃までは新しい挑戦が可能であることが多いです。
4-4. 転職に失敗してしまった建築士の事例
逆に、事前の情報収集などが不完全だったり、ネガティブな理由で転職してしまったりして、転職に失敗してしまった建築士の事例をいくつか紹介します。
事前に合意していた業務内容と違った
- 教育施設を多く手掛けられると思って入社したら、違う用途のチームに配属された
- 新築に携われると思ったら改修ばかりだった
- クライアントと話す機会もつくれると思っていたら、作図作業ばかりだった
- 思っていたより監理の割合が高かった
といった理由やその逆の状況でも、納得のいかない転職になってしまった建築士の方からの相談が寄せられることも少なくありません。
100% 防げるわけではないかもしれませんが、事前の情報収集を最大限行うことでミスマッチのリスクを下げられるでしょう。
- 会社の公式 HP を細かく見る
- 口コミサイトなどで従業員の評価を確認する
- その会社で働いている知り合いにヒアリングする
- 転職エージェントなどの専門家から情報を収集する
特に「アーキタッグ」と同じ会社が運営している「設計転職」には、
「この設計事務所が気になっているんですが、どんな働き方の会社ですか?」
「アーキタッグで取引があれば、どういう社風の設計事務所か教えてもらえますか?」
といったご相談が多く寄せられます。全国 5,000 社のデータや生の声を確認したい方は、設計転職の専門家との無料相談 でお気軽に質問してみてください。
想像していた働き方と違った
ワークライフバランスを重視してホワイトな設計事務所に転職したつもりが残業が多い会社だった、貪欲に成長したくてガツガツ働ける会社に転職したつもりだったのになかなか仕事を任せてもらえなかった など、働き方や仕事の任せ方も建築士の転職でミスマッチが起こってしまう可能性が高い要素のひとつです。
働き方の実態は公開情報で調べることが難しいものの一つであるため、知人へのヒアリングや専門家からの情報収集を忘れないようにしましょう。
5. まとめ
5-1. 事前準備と情報収集がカギ
繰り返しになりますが、建築士の転職を成功させるには、事前準備が非常に重要です。転職の目的を明確にし、自分のスキルを把握したうえで、履歴書やポートフォリオを作成し、計画的に転職活動を進めましょう。
インターネットの公開情報や転職サイトなどを自分で調べつつ、知り合いにも質問をしてみながら、専門家や転職エージェントからの情報収集も一度は話を聞いてみるといいでしょう。設計事務所は全国に約 10 万社あり、建築士の方が自分で全ての設計事務所の情報を調べ切るのはとても大変です。
たくさんの転職者を見ながら企業情報を把握している専門家に話を聞いてみると、自分が気づかなかった新しい企業を紹介してもらえることも多いでしょう。

5-2. 転職で後悔しないためには
また、「限られた時間の中で、いかに効率的に情報収集できるか」も大きなポイントです。転職サイトや転職エージェントを活用することで、よりスムーズに進められるでしょう。
転職活動の進め方次第で、転職の成功は大きく左右されます。後悔しないためにも、転職を考え始めたら、すぐにスケジュールを立てて行動しましょう。
「設計転職」は、建築業界に特化した転職エージェントです。
一級建築士や建築設計の経験者が在籍し、転職活動の進め方だけでなく、企業文化との相性やキャリアパスを考慮した相談も可能です。
さらに、同社が運営する「アーキタッグ」を活用すれば、本格的な転職の前に業務委託で仕事を受け、企業との相性を確かめることもできます。
転職を考えている建築士の皆さん、こちらの「無料登録 / 転職相談」からお気軽にお問い合わせください。
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